【身体所有感と運動主体感】神経科学と手技療法

身体所有感と運動主体感について。

 

身体所有感(Ownership)とは、自分の身体を自分の身体だと感じる感覚のこと。

この感覚が無くなったり少なくなったりすると、自分の身体をだれか他の人のものに感じたり、モノのように感じて扱ってしまいます。自己認識に大きく関与します。

運動主体感(Agency)とは、ある動きをした時に、自分自身が主体的に動かしたと感じることを言います。

この感覚が少なくなると自分自身がなんの行動をしているのかが分からなくなってしまいます。自分の行動を支配していると感じるためにとても大切な感覚です。

このような研究結果があります。


「隠れた四肢の皮膚温度の低下を測定し、血流の低下を示唆しました。 著者らは、実際の四肢のこの生理学的な不一致を、人工的な身体部分の所有権の取得の結果と解釈した。 」

※これは視覚上から片方の手を隠し、ゴムでできた手を自分の手だと認識させた後に起こった現象です。

「視力と筋紡錘からの入力が身体所有感を生成するのに十分であることを示唆した。」

「私たちが動くたびに、筋肉を制御する遠心性(運動)指令(efference)を生成します。 同時に、私たちはまた、遠心性コピー情報と呼ばれる-運動の結果の感覚より以前の経験に基づいた-予測を生成します。

筋肉および皮膚の受容体に由来する実際の運動に関連する感覚入力は、再求心性情報(reafference)と呼ばれます。 2つの信号の差異(再求心性情報と遠心性コピー情報)は環境入力の結果であり、これは外因求心性情報(exafference)と呼ばれます。このシステム内で発生する可能性があるエラーを理解することは、主体感や所有感の認識の問題を理解する上で大変重要なことです。」

http://mobile.the-scientist.com/article/49268/understanding-body-ownership-and-agency


森岡周先生の本にも分かりやすく記載がありました。

「人は運動を実行する際に遠心性出力に基づき皮質脊髄路を興奮させて筋活動を起こすだけでなく、その出力のコピーを遠心性コピー(エファレンスコピー)情報として、いくつかの脳領域に伝播する。」

「運動意図によって出現する予測である遠心性コピー情報と実際の感覚フィードバック情報が、一致することによって運動主体感が生じると考えられている。」

自分自身を自分でくすぐっても、くすぐったく感じないのは、この遠心性コピーの働きによるものと考えられています。

参考文献:リハビリテーションのための脳・神経科学入門/森岡周。


まとめ

私たちは動くときに筋肉に信号をおくりますが、その時にコピー(エファレンスコピー)を作ります。

その後、実際に動いた時の感覚情報(リアファレンス/筋肉や腱、皮膚などの感覚受容器)が脳へ送られます。

先ほどの運動情報コピーとその感覚情報を統合&確認(エクサファレンス)することで、予測と実際の差異を確認し、今後の運動へ活かします。

この差異が一致したと感じると運動主体感が生まれます。

身体の感覚が鈍くなると所有感が少なくなり、生きている実感が湧きにくくなります。

また、運動不足により、運動主体感が少なくなることも同じように実感が湧きにくくなります。

ボディーワークにより自己の身体感覚を自覚したり、変化させていくことは心理的な変化も起こす可能性があります。

身体だけではなく脳も変化させるために、神経系という「感覚」を再度感じ直すことが大切かと思います。

 

中枢神経


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